年忌法要は、亡き人の命日に、亡き人を偲び、冥福をいのるためにご遺族が、菩提寺に依頼して霊前に経典を読んでいただいたり、法話を聞いたりする仏事をいいます。
年忌とは、ご命日にご冥福を祈る仏事という意味であり、その中に使われる「忌」という漢字は、「いむ・つつしむ」という意のほかに「うやまう」とあります。
この忌という漢字の構成をみると「心」と「己」という漢字から構成され、糸すじを整える糸巻きの象形から、かしこまるの意味をもち、いむの意味を表しています。
このことから、「自分の心を調えて、ご先祖さまや亡き人を敬しうやまう」という意味でしょう。
供養の供という字もまた、「人」と「共」という漢字から構成され、「人を付し、そなえる」との意味を表します。
亡き人を思い返し、自分を見つめることで素直な心となり、霊前に感謝の念をお供えし、ご先祖さまや亡き人をうやまうことが供養なのです。
ですが、私たちのくらしは、家事・仕事や時間に左右されて多忙の日常を過ごし、なかなか自分を見つめる時間をつくれず、返って「不平不満を言う、わがままな心」になり、ゆとりある心持ちになれりません。
年忌に当たり、亡き人やご先祖さまは「騒がしい世間」から離れ、皆様に自分の心を思い返し、この社会に生かされていることへ気付く機会をくださっているのです。
その感謝報恩の真心を供えて、亡き人とご先祖さまと一緒に自分の心を養っていくことが年忌供養の意味でありましょう。
お墓の後ろに木の板のようなものがたっているのを見たことがおありでしょう。
あれは「卒塔婆(そとうば)」といい、「塔婆(とうば)」とも言われます。
これは、古代インドの言葉、サンスクリット語で「ストゥーパ」に漢字を当てはめたもので、仏さまの舎利(お骨)をまつるために建造された仏舎利塔の意味であります。形は土饅頭型であり、今の塔婆の形とは違います。
これは、仏教はインドから中国、朝鮮、日本と伝来され、その過程に伴って塔の形が変化してきたものです。
日本では、五重の塔・三重の塔・多宝塔も皆、塔婆の変形なのです。
塔婆を建てることは、故人のために多大な功徳があるとされましたが、私たちは、あのような塔を建てられません。
誰でも手軽に建てられる「ストゥーパ」として、現在のお墓の後ろに添えられている塔婆に変化していきました。
塔婆は、回忌当たり年の間か1年を目安に下げたほうがよいでしょう。
いつまでも供えていると塔婆がたまってきてしまいます。
下げた塔婆は、古い塔婆入れなど墓地にあると思いますので、そこに納めましょう。
無い場合は、墓地の管理者に聞いてみて下さい。